金曜日   仕組み小説第三部「光を求めて」
8 P65 平成25年9月26日(木)〜

 これはすごい情報だなあ。そんなことまでわかるんだ。哲のこともわかるかもしれない。やっと何とかなりそうな気がしてきた。仕組みのことも気になるけど、何と言ったって哲の問題に手がかりが掴めないと、自分はどうにもならない気がする。それにしても何だろうこの安心感は。こんな感じは初めてのことだ。きっと何かがある。多分何とかなる。これを待っていたんだろうなきっと。
 他の参加者との問答に一区切りがついたとき、弓彦は哲のことを聞いてみたが、予想に反して調べないとわからないと答えられてしまった。そして、哲の確認をするための情報を出さなくてはならなかった。それでもその情報を出してしまうと、また一つ何かが抜けていった感じがして、弓彦は安らいでいく自分の変化をを眺める状態になった。滞っていた重くて深い悩みが消えて身軽になっていく弓彦は、不思議を通り越して安心してしまう変化を警戒しながらも、そこに自分の居場所を探し始めていた。
 これから何が始まるんだろうか? 確実にここには自分の役目がある。探し求め続けてきた何かがここにある。それが何であるかはわからないが、これからはそれを目標にすることになるんだろうなあ。そんな気がする。何か課題が出されるんだろうか? 何をどうすればいいんだかさっぱりわからないし、とっかかりがないからな。聞いてみるか。
「まだ始まったばかりで、人も集まっていないし、こちらもそこまでは考えていませんけど、滝にでも行ってみますか? あなたは研究会で滝行はしたんですか?」
「少しだけ。最近は自分一人でやっていますけど」
「かなり突っ込んではいるんですね。他の二人はどうですか? まだ早いかな?もう少し人が集まってからにしますか?」
「こちらではその他に何かするんですか? 課題が出るとか何かあるんですか?」
「日課のような行法を今まとめているところですけど、個人的にはミタマ調べをすることになりますね。皆さんまだ知らないでしょう? Xさんは研究会は?」
「一度覗いただけで、調べてもらったことはありません」
「Yさんは?」
「ありません」
「影山さんは?」
「知りません。調べてもらうまでには至らなかった」
「そうですか。とりあえずはそこらあたりからということになるでしょうね。こちらでやるのであればのことですけれどもね」
「やってみたいです」
 会が終わってからの帰り道で、弓彦は同行の小野夫人から哲が憑いていることを知らされた。心配そうに見ていたとのことであったが、何も言わなかったらしい。弓彦にはそちらのことはかなり安堵感があったけれども、実際にはまだ何も解決されてはいないということだったのだろう。結局哲に関してもこれからということになるのだろうと思われた。
 さあ、これからだぞ。いったい何が始まるんだろう、楽しみだなあ。ワクワクしてくるけど、これは何だろうか? 魂が躍っているのかな。こんなことは初めてのことだけど大丈夫かな。そちらの方が心配になってしまう。また人生の転機が訪れたといった感じかな。葉子にも教えてやらなくちゃ。紀子は当然のことだけど、なんで葉子なんだろう、おかしな話だ。

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