月〜金曜日  異世界と先祖
平成23年6月14日(火)〜

 異次元世界のいろいろ

 我々物質人間が生きている三次元の世界と違う世界があることは、太古の昔よりいろいろな形で表現されてきた。口伝えで、絵で、あるいは文字でも表現されている。文字や文章で異次元の世界を書き表わす場合、異次元は次元差を伴って区分けされている。たとえば、神界、仏界、霊界、幽界、幽冥界、冥界、さらには魔神界とか賢者界や神仙界というように。仏教や神道ではまた別の表現に変わるけれども。
 昔から伝わるそうした言葉を元に、我々は異次元の世界をそれなりにイメージして分類してきた。ところが最近はそれらとは違う言葉や文字が使われるようになってきている。異次元とは言わずに異界とか異世界と表現する流れが生まれているのである。異次元の各界各層という考え方でとらえてきた世界とは違う語感の「異界」とか「異世界」とは、どういう世界を指し示しているのであろうか?
 そうした言葉の背景を確認してみると、それらの領域は物質人間の世界に非常に近い場所であるように思われる。人間の勝手な想像や創作といったものであることがほとんどであるが、中には今まで異次元の各界各領域と重なる世界を取り上げている場合もある。
 筆者は言葉の研究者ではないし、厳密に言葉の定義をしようとしているわけでもないが、何かしら違和感があるのである。たとえばアーサー王伝説は異界領域のドラマであり、ギリシャやケルトの神々や人間とは別扱いになっている。アーサー王が実在していた人物であるように取り扱われる場合があるが、物質世界に対応している人間は見つかっていない。結局彼らは人間ではあっても、我々と同じ物質三次元の世界にいるわけではなく、別の次元に実在した人物なのである。
 神や精霊などと共存しているので、物質世界ではなく異次元ということになるが、それではそこは神話で語られる神界かと言えばそうではなく、別世界の扱いとなっている。その世界を異界と言っているようなのであるが、それならその世界はどこにあるのであろうか? そのような世界はギリシャ神話でも語られているが、ギリシャ・ローマでは神界の人間や神々と同じ扱いになっているので、非常にわかりづらい。
 アーサー王伝説もそうであるが、ギリシャの神的人間達も我々物質人間の先祖であったとされることがあるので、事はめんどうになってくるのである。物質世界と異次元を行き来することができる者がいるとされているところに、混乱する原因があるかもしれないが、そうだとすればそこは物質世界とは別の世界ということになる。それではその別の世界とはどこなのであろうか?
 物質世界に隣り合っている異次元は幽界とされているけれども、もう一つ別の次元がある。神智学でエーテル界と言っている領域である。そこは地球物質世界を異次元に移したような所で、物質人間世界に近いわけで、アーサー王やギリシャ・ローマの半神半人と呼ばれる者達も、その世界にいたのだろうと思われる。いかにも我々物質人間と共存しているように語られているので、そこらあたりの判断が非常に難しくなってくるのである。
 中国には神仙界とか仙界という表現があるけれども、仙界という領域がエーテル層ということになるようである。そのほかにも精霊界という言い方があり、日本では大本教の出口王仁三郎聖師などが、そちらに出入りしたとされている。問題になるのは、そこにいる神々を神界の神々と同一視してしまうところにある。
 神々とは基本的には神界の存在であるが、仏界にも霊界にも幽界にも神々はいるわけだし、精霊界にも神々はいるので、そこがゴチャゴチャになってしまうのである。神や精霊と接触できたアーサー王や、ヘラクレスのような半神半人達のいるギリシャの古代領域を、精霊界と呼ぶことには抵抗があって、そうした領域を異界と考えることにしていたが、日本での天女や雪女とか鶴の恩返しのような説話領域も異界ということになるのだろう。

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