金曜日   仕組み小説第三部「光を求めて」
P18 平成24年10月26日(金)

 子供から離れると、弓彦の意識には訳のわからない情報がしつこくからまりついてきた。対応の仕方、処理の仕方がわからないので、彼はそれを受け入れないで排除することに専念していた。しかし、一度開いた回路は簡単には閉じてくれないし、遮断し続けるのも疲れるばかりでらちがあかないので、とうとう彼も居直って対決姿勢に転じていった。
 いったいこれは何なんだ? 訳のわからない、くだらないことばかりじゃないか。少しはまともなことはないのか? お前たちは何者だ? 何か用があるのか? 用があるならもっとはっきり言え。誰かの使いなのか? 何だって?えらそうに。このままだと気違いになってしまうだと? もうとっくに気が違っているよ。たたりだ? 呪いだ? 何を原始的な、未開部落の呪いばばあみたいなことを言っているんだ。誰かに助けてもらわなければどうにもならないのかなあ。だけど誰に頼めばいいんだ? 俺はまだ神は信じちゃいないし、仏にもお近づきはない。イエス・キリスト? お呼びじゃない。先祖付き合いもしてこなかったしなあ。医者か心理学者くらいしかいないじゃないか。だけど彼らに何かができるんだろうか? できるなら精神病院はなくなっているはずじゃないか。たくさんの入院患者がいるようだし、ときどき町でもおかしなやつらを見かけるしなあ。治せないということだろう? 困ったな。
『お前は呪われているぞ。何とかしないとこのままでは駄目になる。偉い行者がいるから行って見てもらえ。葉子が知ってるぞ。もう帰っているから電話で聞いてみろ。嫌か? 贅沢言ってるな。このままだとお前は駄目になる。早くしないと気が狂うぞ。呪いがかかっているんだから。誰がかけてるかって? そんなこと言えるか。お前知ってるか? 知らないわ。それよりあんたは誰の手先? どこから来てるの? ここはずいぶん混雑しているなあ。それほどの玉か? 誰の指示でこんなことになっているんだ? そんなこと言えるか。おい、ほんとに呪いをかけているやつがいるぞ。哲の知り合いか?』

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