金曜日   仕組み小説第三部「光を求めて」
P20 平成24年11月9日(金)

 念で返せば返せることがわかったが、返せば返すほど逆に向こうからの力は強くなっていった。弓彦はしっかり意識を集中して、やってくる呪力を思念で押し返し続けていた。しかし、いくらやっても終わらない。向こうの方が上手だし、専門家という感じがする。そのままではくたびれ果てて負けてしまう気がする。仕方がないので、今度は反発するのは止めて、ただ受け流してみることにした。つまり自分の意識や意思をニュートラル状態にして、エネルギーを眺めてみることにしたのだった。
 ウワー、どんどん入ってくるなあー、自分の中に溜めないようにしないといけないぞ。自分の体の中にとどまると呪いは発動する。体を通り抜けさせてしまえ。抜けろ、抜けろ、抜けてしまえば元へ戻って行くしかないはずだろう?人を呪えば穴二つだ。どんどん来い、どんどん来い。そして通り抜けて元の所に戻って行け。
 かなりの時間それは続いた。向こうがやめないので、弓彦もやめるわけにはいかなくて、じっとそのまま同じ作業を続けていった。押し返すよりその方が楽だったからである。そうしてしばらく訳のわからないものにお付き合いしていると、向こうで誰かがドシーンと仰向けに引っくり返った気配がした。そんな感じが伝わってきたのである。
 やっと終わったか。誰が、何でこんなことを仕掛けてきたんだろう。なんだか女の行者のような感じがする。護摩を焚いて調伏しているようなやり方だな。何なんだろう。何で自分がこんな目に遭わなければならないんだろう。誰かに頼まれてやっているんだろうか。ありゃー、またやり始めたぞ。苦しいな。いったい何なんだこれは。どうすればいいんだ? とりあえずさっきと同じようにしてみよう、それしかやりようがこちらにはないんだから。返すのは疲れるし、向こうには対抗手段があるような気がするから、受け流して帰って行かせるしかない。
 それで楽にはなったけれども、それだけでは解決にはならなかった。対抗せずにただ眺めているだけなので疲れることはなかったけれども、それではらちがあかない。向こうが誰で、何を目的にしてそんなことをしているのかわからないので、対処のしようがない。向こうから勝手に仕掛けて来るそうした奇怪なパワーを処理する方法を見つけなければ、自分の生活どころではなくなってしまう。またまた精神病院への道が開いてしまう。

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