金曜日   仕組み小説第二部「再出発」
5 P36 平成23年10月14日(金)

〜ちらですればいいのに、どうしてもこちらで結婚式するんだと言ってごねたらしい。兄らしいけど、あちらも大変だから、プラハでもやってくれということになりかかっているんだそうです。もしそうなったらあなた行きますか?」
「行けるものなら行きたいね」
「子供がいなければ私も行きたいけど、ちょっと無理じゃないかしら。兄さん学生時代の友達なんかに呼び掛けているみたいだけど、こちらでやるのが本式だということになると、なかなか行けないでしょうね」
「そうだなあ。お父さん達に行ってもらったら?」
「お母さん身体が悪いから無理。その代わりに私たちにと言ってくれています。でもやっぱり子供が‥‥」
「子供のことは何とかなるんじゃないか? 僕が手伝うことにするよ。今までやらせてくれなかったから黙って見ていたけど、これからは君だってプロの碁打ちとして生きていかなくてはならないし。どうせやるなら徹底したほうがいいからね」 「そうですね。お兄さんたちが帰って来ることになると、私ものんびり実家に居座っているわけにはいかないし、どうしたものかと実は心配なんです」
「そうだろうな。僕だって剛さんたちが帰って来れば、このままではいられないだろうな。小説に本腰を入れないと、君に負けたままでは納得いかないし」
「そんなこと‥‥」
「昇のことは少し僕にもあずけてみたら? それほどひどいことにはならないと思うよ」
「ありがとう。そうしてみようかな。今まではそんなことは絶対してはいけないことだと思い込んでいたから。それにしても弓彦さん、あなた小説を書く気になれそう?」
「おかしいね、何だかそうしなくてはならないような感じがしてきた」
「うれしいわ。私が駄目にしてしまったんじゃないかって、ずっと心配だったから」
「まだどうなるかはわからないけど、変だね、状況が変るとこんな動きになるものなんだろうか。古美術の勉強があったからそれで気がまぎれていたけど、これからはそうはいかない感じだな。それだけで書けるようになるとは思えないけど、何かが動いているよ。もしかしたら新しい何かが出てくるかもしれない」

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