金曜日   仕組み小説第二部「再出発」
5 P35 平成23年10月7日(金)

〜がなあ」
「モデルはあった方がいいわよ。使いたければ使いなさい。これでも経験は豊富なんだから」
「君を書きたいというわけではない」
「そんなに意地を張らないで、もっと素直になりなさい。定期的に会ってみる?骨董屋さんでまともにやれたら、またなんとかなるかもしれないし。私だってまだ完全に気持ちが離れたわけではない。お付き合いだけは続けていかなければならないような、何か妙なものがあなたにはあるから。それが何かを確かめてみたい気持ちもある」

  5

「やっと寝てくれました。最近はちょっと情緒不安定気味で、ぐずってばかりいる。どうしたのかしら。二才になったころから何か変な感じがときどき混じるけど、大丈夫でしょうか? 医者に診せるほどではないとは思うんですけど」
「ご飯のおかわりをくれないか。きょうはちょっと疲れてお腹がすいた。昇のことは君にまかせっきりだからよくわからないけど、手に余るほどでもないならそれほど心配しなくてもいいんじゃないのか。身体が悪いということではないんだろう?」
「身体ではないんです。ときどき様子を見てやってください。父親が必要なのかもしれませんから」
「珍しいね、君がそういうことを言うなんて」
「実はプロの囲碁試験に合格したんです。それでちょっと不安になって」
「なんだ、君のほうが問題だったのか。だけどおめでとう。とうとうやったんだ」
「中断してしまっていたからもう駄目だと思っていたけど、何とかやれました。それでも三年もかかってしまった」
「そうだね、根気強いからな君は。それで子供のほうが心配になったというわけだ。仕事が増えるわけか。こなせないほどあるわけ?」
「かなり心配で、母に手伝ってもらって何とかやるつもりではいます。だけど兄夫婦も帰って来ることになったし」
「ああ、いよいよなんだ。それで何時帰って来るの?」
「あと三ヶ月はかかるって。チェコに寄って、あちらでも結婚披露をしたいらしい。あ〜

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