月〜金曜日 高級娼婦 | ||||
P1 平成24年9月24日(月)〜 | ||||
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高 級 娼 婦 静は英語は話せたが、エドガーも日本語は達者だった。静はそのことを教えられてはいなかったので、最初はひどく驚いた。 「あなたは『しず』ですか? 『しずか』ではないのですか?」 「しずです」 「字を見たとき『しずか』なのかなって、ちょっと期待していたんですけどね」 「どうしてですか?」 「日本の女性としては最高級の感じがしませんか?」 「そうですね」 「あなたにお会いしたときの印象も『しずか』の感じでした」 「それでは『しずか』にしておきましょうか?」 「ハッハッハ、『しず』でいいですよ。それも悪くない」 そんな感じで始まったお付き合いであったが、場所は日本ではなく、英国のロンドン、今はウェストミンスター宮殿の議事堂の傍聴席であった。静はロンドンの大学に留学したこともあったので、ある程度英国のことはわかっていた。しかし議事堂には入ったことがなかったので、詳しいエドガーに案内してもらったのであった。 二人はその前に、ウェストミンスター・アビーの礼拝堂でしばらく座っていた。彼女はそこで執り行われたエリザベス一世の戴冠式に思いを巡らせていた。英国のキリスト教をカトリックから独立させた女性として、男に頭を下げなかった女として、静は驚嘆と敬意を抱き続けていたからであった。礼拝堂では話せないのでそこを出て、議事堂に向かいながら二人は話した。 「あなたはケルトの神話はお好きですか?」 「好きですよ」 「アーサー王の伝説をどうお考えですか?」 「日本の神話くらいには考えていますよ」 「でもあなたはマーリン系ですね」 「‥‥‥‥」 「マイトレーヤーに関してはいかがですか?」 「手厳しいですね」 「アニー・べサントもお嫌いでしょうね」 「そうなるのかな、あまり考えたことがないので」 「そうですか。じつはマイトレーヤーの側近になっている日本人がいるんです」 「ベンジャミン・クレームのですか?」 「あ、失礼しました。マイトレーヤー本人のです」 「あちら側のですか? ベンジャミン・クレームはまだ生きていて活動していますからね。日本人の側近がいても不思議ではないわけでしょうが」 「生前からその組織にいたとは思います。そのことははっきり聞いたことはありませんでした。それらしいことは言っていましたけれども」 「ああ、そうですか。お知り合いですか?」 「もう死にましたけど。生前にいくらかありました」 「今もあるんですか?」 「多少あります」 「マイトレーヤーともですか?」 「そちらから知らされたんです、側近に日本人がいるということを」 「なるほど。それであなたもそちら系ということになるんですか?」 「まさか。そうだったらこんな所には来ていません」 「そうですか?」 「マイトレーヤーの人間レベルでの活動はもう終っていると思っていたものですから、勘違いしてしまって」 「予言はみごとにはずれましたからね」 |
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