月〜金曜日 高級娼婦 | ||||
P2 平成24年9月27日(木)〜 | ||||
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「今はどんな活動をしているんですか?」 「宇宙レベルの情報を扱っているようですよ」 「そうですか。それはそれとして、イギリス国教会では何を目指すんですか? 天国ですか?」 「いや、理想郷ということになっています」 「ユートピアですか?」 「アルカディアとされています。トマス・モアのユートピアはただの空想の産物だし、規模があまりにも小さい。それに比べてアルカディアはギリシャの南に実在していて、より現実的ということになるんでしょうか。昔からそこは牧歌的な理想郷と言われていた」 「桃源郷とも違うわけですね」 「パラダイスとも違う。しかしあなたは何を目指しているんですか? かなり特殊な領域に興味がおありのようですが」 「そうですね。あなたにはこうしたお話のほうがいいと思って。普通の世間話では退屈でしょうから」 「そうでもないですよ。あなたのような女性の場合は、あまり難しい話でないほうが気楽でいいかもしれません」 「そうでしょうか。あなたの日本語が素晴らしいので、ちょっと突っ込んだお話をしてみたくなったものですから」 その日は天気のいい初夏の、気持ちのいい午後で、人通りもあまりないので、のんびりじっくり話し合うことができる状況だった。ウェストミンスター宮殿まではかなり歩かなくてはならなかったけれども、ゆっくり話し合うには都合のいい距離であった。歩くことは嫌いではないとエドガーが言ったので、静は車に乗らないで歩くほうを選んだのであった。そして、ゆっくり散歩するように歩きながら、会話を楽しむことにしたのであった。 「アーサー王の話を聞かせてください」 「私は専門家ではありませんよ」 「矛盾が多くて解釈に困りますけど、登場人物に二重性があるのはどういうことなんでしょうか?」 「時代によって内容が発展したということでしょうか。つまりギリシャ神話とローマ神話の違いのようなもので、地域によっても時代によっても変化や発展があるということでしょう」 「ランスロットはフランス人のように思えるんですけれども、湖のランスロットという描き方もある。トリスタンとイゾルデのトリスタンにしても、円卓の騎士になっている話もあれば、後に二人で静かに暮らしたという話もある。魔法で姿を変えるということがこちらではかなり語られますね。その影響でしょうか?」 「異界の話ですから、そこらあたりは融通無碍ということになるのかも」 「アーサー王という方は、それほど実力のある方ではないように思えるんですけど、なぜ彼の復活が語られているんでしょうか?」 「完成されてはいないからでしょう」 「キリスト教化してしまったからですか? ケルト神話はまだすたれてはいないわけでしょう?」 「さあ、それはどうでしょう。話としてはみんな大好きですけれどもね。もっともイギリス政府は二千十年にドルイド教を公認しましたから、今ではもうそれほど遠慮しなくてもすむようにはなっています」 「ああ、そうですか。それならもっと気楽に話してもいいわけですね。魔的な秘密結社というイメージが強かったものですから」 「最近は魔法の花盛りですから」 |
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