月〜金曜日 聖なる地 | ||||
P2 平成24年6月6日(水)〜 | ||||
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彼女は白人政府の同化政策のため、親から離されて教育を受けた先祖の流れで、まともな親を知らなかった。白人の血が混じって容姿は素晴らしかったが、どこか普通とは違う雰囲気があった。それは職業からくるものではなく、人間性にかかわる本質的な性質のようだった。静か過ぎて不気味な雰囲気があるのである。そして外で二人きりになったときなどに、突然異次元がらみになってあらぬことを口走るのだった。初めてそのことが起こったとき、ワタルは仰天して命の危険を感じたが、それが精霊からのメッセージだということがわかると、それからは逆に彼女に興味を抱いて、彼女との接触を深めていったのだった。 アボリジニの神話には、神々や人間が動物化されていることが多く、精霊がそうしたものの中に潜んでいるとされているが、それは神々を認めないキリスト教の影響ではないかとワタルは思うのだった。精霊というのは神であり、人間の場合も動物や鳥にされていることが多いのは、もしかしたら同族を食べなくてはならない環境だからではあるまいか。隠さないと都合が悪くなるからそんな表現になっているような気がするのである。 原住民の中には衣類をまったく付けていない者がまだいるようだし、わずかな衣類を身に着けている先住民系であっても、彼らは原始的で純度の高い人種のように思える。同化政策で保護されている者達が生きるのに苦労しているのも、進化しきれないものがあるからだろう。進化を拒んでいるということだけならそれほど珍しいことではないが、ワタルには彼らに純度の高い何かを感じるのである。そうしたアボリジニが気になって仕方がないワタルは、そのことの確認をする目的もあって、オーストラリアの住吉家に滞在するのであるが、周りの誰もそのことは知らなかった。 アボリジニは魔神系であるという思いがして、そんな感覚でサラと付き合っていくとそれなりにうまくいくので、そこらあたりからサラにかかる神々や先祖方と付き合うことになっていったのだった。彼女はそうした心霊現象を嫌っていて、普段はそうしたことを周りの誰彼とすることはないということだったが、ワタルとは嫌がらないで付き合ってくれるのだった。それはワタルが心霊術のような西洋流のやり方で対応しなかったからだと思われた。だいたい彼はそういうことを要求したわけではなかったし、向こうから彼に勝手に語りかけてきたので、それで彼女には違和感がなかったのかもしれなかった。 「お前は日本人か?」 「そうです。あなたは?」 「キリスト教徒は精霊と言っている」 「神?」 「やっぱり日本人は違うな」 「魔神系でしょう?」 「よくわかるな。我々はそれが最近まではわからなかった」 「どうしてですか?」 「それが当たり前だったから、考えようがなかったのだ」 「そうですか。それがわかるようになったんですか?」 「うれしいことに整理をしてくれた者がいたのだよ。それが日本人だった」 「それは誰ですか? いつ頃のことですか? オーストラリアにいるんですか?」 「日本から出られないとのことだ」 「最近のことですか?」 「そうだな、それほど前のことではない。十年ほども前のことだろうか」 「どういう人ですか? 人間ですよね」 「そうだ」 「まだ生きている人ですか?」 「我々だって生きている」 「それはそうですが、まだ死なないで物質世界にいる人ですか?」 「ハッハッハ、そういうことだ。私は日本語だって話せるのだぞ」 「日本に行くんですか?」 「もちろん行くことはあるが、それ以前に日本語のトレーニングをさせられたものだった」 |
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