金曜日 仕組み小説第三部「光を求めて」 | ||||
8 P64 平成25年9月19日(木)〜 | ||||
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哲との問題を解決するための方策があるような気がするのである。神行をしている佐田靖治という人間に会えば、そこらあたりの手がかりが得られそうな気がするのである。自分だけではどうしても解決できない問題、あるいは哲が陥ってしまっている暗闇の淵、そうした問題を解決することができる糸口がそこにはあるような気がするのである。しかし、何かに引き止められてしまう。自分よりも相手に悪影響を与えてしまうような予感がするのである。要するに彼の神行の邪魔をしてしまうことになるというような、だからしばらく時期を待たなくてはならない、そんな感じであった。 一方葉子に関しても興味深い変化が起こっていた。弓彦が渡した『子神たち』の本を読んだ彼女は、それを夫にも読ませていたが、鎮夫がその著者と接触があったことと、同調できる感覚を持っていたこともあって、かなりの関心を示していたからであった。鎮夫は研究会の後継者に不満を抱いていて、亡くなった会長を引き継いでいるのが佐田靖治だと確認したらしかった。そうしたこともあって彼らにも転機が訪れかかっているようだった。 その時期は都市の書店で二冊目の著書を見つけた時にやって来た。その本で著者は集会を開くことを告げていた。その案内に従って弓彦が集会に出掛けたのは、もはや五回目になっていた。本を見つけるのが遅れたことと、出掛ける準備が整わなかったためだった。しかし遂にその時は来たのだった。そして彼は衛星都市の福祉会館の会合に出掛けていった。会合には彼以外に五人しかいなかった。主催者と二人の女性、客は男性二人と弓彦しかいなかった。 全員が談話できるように机を並べ替えてある席に座って、主催者が二人の先行者と会話している間、弓彦は少人数のその会の様子をうかがっていた。『子神たち』は異次元私小説とでも言えるものでわかり易かったし、二冊目の解説編『新世紀の神話』も明快な新説で、そこで展開されているのは「人類の仕組み」という珍しいものだった。そして、そこに弓彦が感応する何かがあったのである。 熱いなあ、何だろうこの熱さは? この人から来ているんだろう? これは何の熱さだろうか。汗が出てくるほどだ。こんなことってあるんだろうか? エネルギーなのかな、光なんだろうか? これは本物だぞ。亡くなった会長にはなかったものだし、あちらを引き継ぐだけではなく、正しているんじゃないのかな。多分著書で言っている通りなんだろう。行き着いたような気がするけど、これは強烈だなあ。ついて行けるんだろうか? 「影山さんはここへはどんな感じで来たんですか?」 「最初の本を読んで前から会ってみたいと思っていましたので」 「会ってみてどうですか? ただの人間でしかなくてがっかりしたのでは?」 「いや、熱いんです。熱くて、熱くて」 「熱い? 何が熱いんですか?」 「先生から来るんです、熱いのが」 「へえ」 「エネルギーでしょうか、光でしょうか。さっき光も見えたんです。強烈なのが」 「へえ、どんな色でしたか?」 「空色でした」 「そうですか。あなたは研究会にいるんですか?」 「会長が亡くなられてからは行っていません。先生はあちらを引き継いでおられるように思えるんですけど」 「どうでしょうか」 「会長との接触はあるんですか?」 「会長は今二つほど下の宇宙に落ちておられます。潰れたツケを払わなくてはならないらしい」 「潰れていたんですか?」 「潰されて潰し役をさせられているようです」 「仕組みですよね」 「そうです」 |
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