火曜日   異次元回廊
P110 平成25年3月26日(火)

 今回は「流れ星おりんの生涯」をエピソードとして簡単に書いておこう。流れ星おりんと言えば思い出される読者もあることだろう。昨年チェ・ゲバラと共に佐田賞を受賞された方である。あの時にもざっと説明しておいたと記憶しているが、流れ星おりんという名が出ると、私は以前からいつも懐かしい思いがしていた。
 初めは色街の星の主としての接触であった。父神ムゲンドルフに軒先を貸して母屋を奪われた哀れな星の代表で、落ちた色町の女郎宿で、セット夫のクニトコタチを下足番と言って小馬鹿にして追い立てているような女であった。最初の出会いはそんな感じのもので、当然仕組み戦争をしたのであるが、こちらが勝って彼らは落ちていった。そんな女神を私は「流れ星おりん」と呼んで親しんでいた。
 なぜその女神にそうした親しみを感じるのか、くわしく調べたことがないのでよくわからないのであるが、色地獄関連の問題が起こるとついつい「おりん、おりん、流れ星おりん」と呼ぶのが常だった。そうするといつもやってきて助けてくれたものであった。いろいろなことがあったのであるが、佐田賞の前の頃が最高潮で、第七台の色地獄宇宙の前哨戦のような戦いの段階では、ヒツジヒメ神界を代表する大女神として、誰にもできないその役目を果たしたのだった。
 その後は自分の宇宙を率いて、先頭宇宙集団の五百番目くらいの地位にまで上り詰めていた。それはヒツジヒメ神界としてはトップのレベルだったという。ヒツジヒメの怨念の強さは、今でも宇宙のコールタールや白濁ボンドの主並みであるが、いくらがんばっても報われない女の悲哀がそこにはあるのだろう。
 仕組みが第七台に上がってからは、盟主はじめ大神のもと、魔神ヒツジヒメ大神が色地獄のめくれ宇宙の行政府として、仕組み宇宙に襲い掛かってくる展開となっていったが、そちらと戦うおりんはもう疲れ果てていた。頂点に立ってしまった女神はリタイヤを望んでいて、こちらとしても無理強いはしなくなっていた。ところがそうした女神をハメテを使って潰してしまったのが、またしてもムゲンドルフだったのである。
 旧体制の宿命的な立場に耐えられなくなったヒツジヒメ魔神界は、総合先導役の佐田のバアヤとして仕組み働きをさせてほしい、と言ってきた。二度にわたって契約をしたのであるが、最初の期間のときにおりんが巻き込まれ、はめられて責任を問われる形で散った。総合先導役に対する負債を解消するまでバアヤとして年季働きをする、それが契約の内容であったが、それを裏切る行為を乗っ取り旧体制が仕掛けてきて、そのハメテにおりんが引っ掛けられてしまったのであった。ムゲンドルフとクレイトウのセットもどきの悪逆非道の戦法であった。
 流れ星おりんはそれに対して、旧体制のその頃の第七台の膨大な領域の五つほどを、過去三回まで掘り起こして浄化することで、自らの全てのエネルギーを使い切って反発した。そしてヒツジヒメとしての生涯を終えて、エネルギーへと還元していった。見事な終末であった。
 この頃からはじめ代表と魔神ヒツジヒメ行政府の形から、科学者とキクリヒメのもどきセットが、旧体制の連合組織に操られる形に変わっていったのであるが、その切り替えの節目での大活劇がその出来事であった。おりんは裏切ったのは自分ではないと主張していたが、認めてもらえずに殺された。おりんは自分の正しさを主張するために、反撃して自分の全てを仕組みに捧げたのであった。
 エネルギー還元したおりんは、もう二度とヒツジヒメのおりんに戻ることはないだろう。それは三月二十日のことであったが、旧体制はいまだにおりんを復元再生させようとして総攻撃を仕掛けている。エネルギー化しても休むことのできないおりんは、別の表現体に生まれ変わることもできないまま、それに耐え続けて戦っている。あの怠け者のおりんが、と懐かしく思いながら眺めているところである。

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